「地域の中で生きる」

やっぱり地域の中で共に生きる、ですかやっぱり。地域の方にわらしべ舎がせっかく、この太白区西多賀っていうところに来たので貢献をしたいって思いがありました。近くに「天沼」という沼があってそこが、ここにわらしべ舎を立てるときにご近所にご挨拶に回ったんですね。その時に老人クラブの方たちが、ここの沼は、昔はホタルが飛ぶほどきれいな水だったんですけど、今はこんなに生活排水で汚れてしまいました、って言うんですね。それじゃあ私たちが石けんに使っている、水を浄化するというEM菌でホタルを呼び戻しましょうと、「3年で呼び戻します」って約束をしました。いろいろ工夫をして1年中、今ホタルの養殖もしてるんですけどもね、ホタルの養殖。それからホタルを養殖するためはホタルの餌になるカワニナという貝、巻貝なんですけど、それも取りに行ってそしてここで性交させてある一定の大きさになったら沼に放す。そしてたいていホタルが飛ぶのが6月末から7月の頭の、こう湿気っぽいときなんですけどね。わらしべ舎がスタートしたんですが、今はそれこそ高齢の人も、それから地域の人たち、住民も一緒になって1年間のタイムスケジュールの中で天沼浄化の活動としてます。

そういう時にすごく微笑ましい話題があって、障がいの重い人たちのグループがそこに関わってるんですが、天沼浄化活動と呼んでいるんですが。障がいの重い、どちらかというと重い人たちが関わっているんですが。小さい子がその泥だんごに、EM菌というのを入れた泥だんごにしたものを沼に投入して。投げるんですが、それを上手くできないとやってもらったり。あと「投げたら」っていうふうにしてくれたり、そんな微笑ましい場面もあって。まさにやっぱり年齢とか、知恵が遅れているとか遅れてないとかじゃなくて、そういう人間の優しさってのは小っちゃい子は率直なので「変だな」と思えば「変だな」とその通り思うし、あと「困っているのかな」と思ったら。大人だと逆に、ちょっとよく街でもあるじゃないですか困っている人に手助けしたいんだけど何か気恥ずかしくて、手助けしようかどうしようかな、なんて思うけど。小さい子にはそういうのってないんですよね、「困ってるな」と思ったら「ハイ」って泥だんごをくれたり「投げな、こうだよ」なんてしぐさをして投げる真似をして教えてくれたり、そんなこともありますね。

わらしべ舎の中でもやっぱり。いつも居眠りをして、てんかんの発作があって寝てる人がいるんですが、そんな人のことをいつもトントンと優しくなでてあげる人もいたりして。本当に、何というか人間の社会ってそういうふうにお互いに持ちつ持たれつ、できる人ができることをやるということで「生かされているんだな」と思いますね。

 

「こころのわらしべ長者として」

あと私は「世の中には無駄なものはない」って思っているんですね。無駄なものっていうようなものは、人間のものであり物質のものであり経験であり、無駄なものはない。そこからわらしべ舎っていう名前が生まれたんですけれども、わらしべ長者という、あれは今昔物語かな。わらを1本村人が、村の青年が掴んで、それを降り回して歩いていったらアブが飛んできたんでアブをこう付けて歩いてたら泣いてた子どものお母さんに会えたら子どもは泣き止んだ・・・でドンドンと展開していって最後は村の長者になる、というお話です。

私たちはお金もちの長者にはなれない(笑)と思うけれども、でもそういう「こころの長者」にはなれるかなと思って、わらしべ長者、本当にわらなんてみんながもう、本当に1本あったって何てことはない、みんな見過ごしてしまうものだけども。それから始まって廃油という、世の中でもう使い終わって汚れてしまった本当に邪魔になる廃油。それを集めて、そして石けんに変える。

当時はどこの作業所も、割合かわいらしい飾りものを作っているとこが多かったんですね。わたしもいろんな、やっぱり自分が作業所を始めるにあたっていろんなとこを見せていただきました。でステキだなと思う、例えば陶器があったり飾りものがあっても、1回はワッすてきと思って買う、でまた次に行ったときに買おうかなと思うけど。こんなにお皿やコップがいくつもいくつもあって仕方がなく、だんだん何かそこに行くのが、何か「買わなくちゃいけない」って思いにさせられてしまうんです。「ああやっぱりあれだな、やっぱり仕事としては」良いもので生活に必要なもので消費されるもの、それだったらお客さまも「いいな」と思えは買い続けてくださる。「買ってください」って言わなくても商品さえ品質が良ければ買ってくださる、という思いで、そんなかたちで「消費されるものを作ろう」っていうことで品質のいい石けんを作ったつもりです。

今から思うといろいろです。一番最初はドラム缶に90キロっていう小さい量だったんですが、一番最初はドラム缶でなくてこういう四角い一斗缶に廃油を少し入れて、そしてアルカリ分が必要なので苛性ソーダを入れて、そうして作ってたんですがで保温しなきゃいけないので毛布を被せていました。それから今度ドラム缶になって、今度は廃棄物処理場で牛乳のタンクをもらってきてっていうような感じで、だんだん大きくなっているのです。乾燥させると粉石けんって白くなるんですね、廃油だから最初はベージュ色なの、それがだんだん乾燥がいくと白くなるんで、昔は自然乾燥だったのでこういう梅雨時だったりするとなかなか上手くいかなかったんですが。今は機械で乾燥しているので品質も一定になって、とっても良い石けんができているかなと思いますね。

 

「利用者さんが増えてプレハブ小屋を建てるまでに」

利用者の人たちも最初は、先ほど言ったようになかなか、見学には来るけれども自分の子どもの一生の作業所だと思える人は少なくて。見学して「あっ、また来ます」って言うけど、来なかったです。そんなことのずっと繰り返しで。でもやっぱり1年2年3年・・・と経つうちに「うちの子も、うちの子も」というかたちで人が少しずつ増えてきて。さっき言った、8部屋でももう足りなくなってしまって。食事をする、作るのも自分たちで作っていたんですがもう作りきれなくなって。じゃあ、ということで。食堂も狭くなったし、ということで今度はプレハブ小屋を建てました。お金がないのでプレハブ小屋の材料は、当時選挙があって選挙事務所はプレハブだったんですね。選挙が終わったプレハブを壊した廃材をもらってきました。

それで粉石けんですね、この石けんや手工芸品。それも手工芸品だけどやっぱりこだわりがあって。米袋、お米の袋、農協なんかが。お米袋を使ってそして飾りものを作るとか。さっきの「無駄なものはない」っていう、米袋っていうのもお米を出荷して相手が引き取ってくれたら米袋はもういらないんだけど、すごく丈夫なんですね。それとかろうそく、結婚式場とか葬儀屋さんで使うろうそく。あれって使ってしまったあと廃棄してしまうので、向こうも「もったいないな」と思ってたらしいんです、それをもらってきて一回煮溶かして、お鍋で。ろうって色素と、いわゆるろうの脂分なので。それにクレヨンをちょっと削るとパーッと赤なら赤くなる、黄色なら黄色くなる。でそれをお料理に使う星型とかハート形とかに固めて。そしてろうそくを、もともとの芯だったろうを。お鍋の中で入れると溶けてただのもめん糸になるので、それを割り箸でピンとさせといて。で型に入れてろうそくを作るっていうような。そんな廃棄されるろうそくを使ってかわいらしいろうそくにしたりとか、そんなものを作りましたかね。

結構みんなやっぱり独創性があるので。型にはめるだけじゃなくて自分で触ろうとするんだけども、やっぱりろうで熱いので「これはこういうふうに流しこむんだよ」っていうような手順を教えてあげて、みんな喜んでやってましたね。